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大阪高等裁判所 昭和42年(ネ)631号 判決 1968年7月24日

控訴人(附帯被控訴人) 河合宗治郎

旧商号水野機械化建設株式会社こと

控訴人 関西土木株式会社

右代表者代表取締役 柴崎清一

<ほか一名>

右三名訴訟代理人弁護士 石橋利之

被控訴人(附帯控訴人) 岡田茂義

右訴訟代理人弁護士 遠田義昭

主文

一、本件控訴を棄却する。

二、附帯控訴に基き、原判決中附帯被控訴人に対する金員支払命令部分を左のとおり変更する。

三、附帯被控訴人は附帯控訴人に対し昭和三三年一一月一八日から原判決末尾(二)記載の建物(A)(B)(C)を収去して同(一)記載の土地を明渡すまで一ヵ月金一、九九〇円の割合による金員を支払え。

四、訴訟の総費用中、附帯控訴に要した費用は附帯被控訴人の、その余の費用は全部控訴人ら三名の負担とする。

事実

控訴人ら訴訟代理人は「原判決中控訴人ら敗訴部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに附帯控訴棄却の判決を求め、被控訴人代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決並びに附帯控訴として主文第二、第三項同旨の判決を求めた。

第一、被控訴人(附帯控訴人)の主張

一、被控訴人は神戸市東灘区本庄町深江大日町一七番宅地一〇七三・四八坪を所有するところ、昭和二一年頃控訴人河合に対しそのうち約九六坪(原判決末尾添付図面イ、リ、ヌ、ハ、イの各点を直線で結ぶ範囲。なお、右図面中に次のとおり、ト、チ、リ、ヌ、の各点を附加する。すなわち、ニ、ハ線上のニから東へ〇・八六米の点をチ、同じく〇・一六米の点をヌとし、チ点からニロ線に平行に延ばした直線とイロ線との交点をト、ヌ点からの同じ平行線とイロ線との交点をリと定める。)を賃料一ヵ月四八円、毎月二五日当月分払いの約定で賃貸し、同控訴人は現在右地上に原判決末尾記載(二)の(A)(B)(C)の建物を所有している。しかし、その後昭和二六年頃右一七番地の宅地は区画整理事業により約三割減歩となる現地仮換地処分を受け(本換地処分は昭和三一年)、よってその頃右賃貸地の範囲も控訴人河合諒承の上八七・四六五坪(但し、原判決図面(二)のイ、ト、チ、ハ、イの各点を直線で結ぶ範囲)に減少した。

二、ところが、控訴人河合は昭和二二年二月分以降の賃料を支払わず、またいつの間にか前記賃借地を越えて、前記減歩した範囲(ト、リ、ヌ、チ、トの各点を直線で結ぶ範囲)を含む約一二坪(ト、ロ、ニ、チ、トの各点を直線で結ぶ範囲)にわたる被控訴人所有地をあわせて不法占有していたので、被控訴人は同控訴人に対し昭和三三年一一月七日到着の内容証明郵便で右到着の日から一〇日以内に前記延滞賃料(但し、公定賃料)及びこれに対する各履行期(毎月二五日)から支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いと前記不法占有地一二坪の明渡返還の催告をし、もし右期限内にこの催告に応じないときは本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。控訴人らは右催告賃料額は不明であるというが、公定賃料は計算により算出可能であり、これを詳述すれば原判決事実摘示三、(原判決三枚目表一二行目から同裏一〇行目まで)のとおりであること明らかである。仮りに賃料が当初の坪当り月五〇銭のままであるとしても右催告は右の範囲内において有効である。

しかるに、控訴人河合は前記催告に応じなかったから、本件賃貸借契約は昭和三三年一一月一七日の経過により賃料不払い及び善管義務違反を理由とする前記解除により終了した。

三、仮りに右解除が認められないとしても、控訴人河合はかねてより本件賃借地のうち原判決末尾記載の建物(C)の敷地部分を国包某に転貸し、国包は右地上に右建物を所有していた。

もっとも、控訴人河合はその後昭和三八年四月頃右建物(C)を譲受けたけれども、それまでは右土地部分を無断転貸していたのであるから、被控訴人は昭和四〇年二月八日の原審口頭弁論期日において同控訴人に対し、本件賃貸借契約解除の意思表示をした。

四、控訴人ら債権者遅滞及び権利濫用の主張を否認する。控訴人河合は被控訴人の度々の賃料請求を一蹴して顧りみず、十数年にわたって賃料の支払いもせず、かえって、本訴提起後の調停中に土地売却案を出すと、現状無視の低廉な価格を主張し、また自己の選挙運動のため(神戸市議会議員選挙)本件賃貸借地西側の被控訴人所有地に無断で小屋を建て、柵をめぐらせる等の不法を敢えてする人物である。なお、また同控訴人は昭和三三年の解除後引続き前記図面ロ、ホ、ヘ、ニ、ロを直線で結ぶ範囲内の部分を不法占有していたので、被控訴人は当初本訴でこの部分の明渡しも求めていたが、その後右部分は他に譲渡し、控訴人河合もこれを任意明渡したので、この部分は取下げた次第である。

五、控訴人関西土木株式会社は本件建物(A)を、同続木忍は本件建物(C)を各使用してその敷地部分を占有している。

六、よって、被控訴人は控訴人河合に対し本件建物(A)(B)(C)を収去して現在占有している土地九九・五四坪(原判決末尾記載の(一)の土地)の明渡し及び賃貸借契約解除の日の翌日である昭和三三年一一月一八日から右明渡しずみまで一ヵ月一、九九〇円の割合による賃料相当損害金(右占有地を九九・五坪とし、その賃料を坪当り月二〇円として算出)の支払いを、控訴人関西土木株式会社に対し本件建物(A)から退去してその敷地の明渡しを、控訴人続木に対し本件建物(C)から退去してその敷地の明渡しを、それぞれ求めるため本訴に及んだ。

第二、控訴人らの主張

(控訴人河合)

一、被控訴人がその主張の宅地を所有すること、控訴人河合が被控訴人主張の頃からその主張の土地を賃借して来たこと(但し、その範囲は当初から現在占有している範囲であって、何ら賃借地を一二坪も越えて占有しているのではない)、控訴人河合が被控訴人からその主張の日、その主張の内容証明郵便を受領したことは認めるが、その余の事実は争う。

二、被控訴人の本件賃貸借契約解除は不適法であるからその効力はない。すなわち、(1)本件賃料は当初から月額坪当り五〇銭であってその後値上げされていないのに、被控訴人の催告額はこれと異るし、元来公定賃料を支払えというのみで金額は不明、不特定であり(公定賃料といっても法令の改変により次々と変更される)、解除の前提たる催告がないに帰する。(2)賃借地の範囲を超えて一二坪を不法占有しているとの点は否認する。仮りに右一二坪を不法占有しているとしても、そのことは本件賃貸借契約上の債務不履行とはならない。(3)元来控訴人河合の賃料不払いは債務不履行ではなく、かえって被控訴人の債権者遅滞である。すなわち、被控訴人は昭和二二年突如として賃料の値上請求をし、控訴人河合が従前賃料を提供しても受領せず、その後も度々賃料協定を求めるのにこれに応ぜず、昭和三七年の調停でも相応の賃料を支払う意思を表明してもこれに応えず、終始硬直な態度を示すのみであった。

三、被控訴人の解除権行使は権利の濫用である。すなわち、控訴人河合は本件土地を建物所有の目的で賃借し、地上建物に居住して今日まで約二〇年間神戸市議会議員としてここを事務所として民政につくして来ており、賃料の支払いについても前記のとおり終始誠意を示してきた。しかるに、被控訴人は本訴提起前にも同じ訴訟を起こしながらこれを取下げたり、本訴係属中控訴人河合の申立てた調停でも専ら非協力的な態度を示して不調とする等、甚だ頑固な態度である。また、元来控訴人河合が本件賃借を続けても、その地位、名誉、資力等から推して、被控訴人には何ら迷惑を及ぼすような事情もない。被控訴人は近隣地を他に譲渡しながら、控訴人河合に対しては調停のさいでも不当な意見をはくのみで意地になって本件土地の売却を拒んでいる。(控訴人関西土木株式会社、同続木忍)

被控訴人がその主張の土地を所有し、そのうちその主張の土地部分を控訴人河合が賃借したこと、控訴人関西土木株式会社が本件建物(A)を、同続木が本件建物(C)を各占有してその敷地を占有していることは認めるが、その余の事実は知らない。

第三、証拠関係≪省略≫

理由

第一、控訴人河合に対する請求

一、被控訴人が本件係争地を含む神戸市東灘区本庄町深江大日町一七番宅地を所有すること、控訴人河合が昭和二一年頃右土地の一部少くとも九六坪(原判決末尾添付図面(一)のイ、リ、ヌ、ハ、イの各点を直線で結ぶ範囲)を賃料月額四八円の約定で賃借したこと(なお、右賃借範囲が被控訴人主張のようにその後八七・四六五坪((イ、ト、チ、ハ、イ))に縮少されたか、または控訴人河合主張のように当初から九九・五四坪((イ、ロ、ニ、ハ、イ))であったかは暫らくおく)、被控訴人が控訴人河合に対し昭和三三年一一月七日到着の内容証明郵便でその主張のような催告及び条件付賃貸借契約解除の意思表示をしたことは当事者間に争いがなく、控訴人河合が原判決末尾(二)記載の建物(A)(B)(C)を所有していること及び同控訴人が右建物を含む九九・五四坪の土地(原判決末尾(一)記載の土地)を現に占有していることは≪証拠省略≫によってこれを認めることができる。

二、そこで、被控訴人の主張中善管義務違反の点は暫らくおき、賃料不払いによる契約解除の点について検討する。

控訴人河合が前記催告期限である昭和三三年一一月一七日を経過しても昭和二二年二月分以降の賃料一切を支払わなかったことは同控訴人の明らかに争わないところである。≪証拠省略≫によれば、控訴人河合は右催告に応えて昭和三三年一一月一七日午後芦屋郵便局差出の内容証明郵便で「公定地代額の計算を明らかにしてもらえばいつでも支払う」旨被控訴人代理人弁護士北村巌に返事したことが認められるけれども、右郵便がはたしてその発信日であり前記催告期間の満了日である同月一七日中に到着したかどうか必らずしも明らかでないのみならず、右のような意思表明だけでは債務の本旨に従った現実の弁済提供があったものと解することはできない。

よって、まず右賃料不払いの経過について考察する。≪証拠省略≫を綜合すると次の事実を認めることができる。

(一)  本件賃貸借契約はもともと昭和二一年六月一日頃被控訴人先代岡田茂左衛門(昭和二四年死亡により被控訴人が賃貸人の地位を承継)と控訴人河合との間で賃借面積九六坪とし、賃料一ヵ月四八円(坪当り五〇銭)、毎月二五日持参支払い、期間は昭和二一年六月一日から三か年とする約定で締結された。しかし、当時は終戦直後の混乱期であり被控訴人側でも賃料収入をあてにしていたため、当時の激しいインフレ傾向に応じて賃料増額を希望し、昭和二二、三年頃被控訴人の妻よしが控訴人河合方を訪ねてその旨申入れたが同控訴人は全くこれに応じないのみか、昭和二二年二月分からは従前賃料さえ支払おうとせず、一度は右よしが支払わない理由をただし、これを書きとめようとしたところ、同控訴人は「メモするような者に話す必要もない」と称してこれを拒否する等のこともあり、以来双方の交通は絶たれ、控訴人河合は右賃料問題を放置して全く顧みなかった。なお、被控訴人側が申入れた希望増額賃料は昭和二二年二月から坪当り八〇銭(一ヵ月、以下同じ)、同年六月から一円、同二三年から二円、同年九月から三円といった程度のもので当時の物価変動に照らし賃貸人の希望賃料としては相応の額であった。

(二)  控訴人河合はその後昭和二六年四月から引続き神戸市議会議員の公職に就いたが一向に右懸案を解決しようとせず、被控訴人を無視し、僅かにその頃本件土地周辺が土地区画整理事業による仮換地減歩処分を受けたさい神戸市の職員杉本清太郎にこれを話したところ、同人が借地の範囲を明確にしておくのがよいと示唆したのにこれもそのままにしていた。

(三)  そこで被控訴人はやむなく昭和三三年一一月弁護士北村巌に委任して同控訴人に対し前記内容証明郵便を送り、その催告にも応じなかったので(なお、同控訴人が一応これに対する返信を出したが、この返信が催告期間満了時までには被控訴人側に到着したとの立証がないことは前記認定のとおり)、同月二八日頃同控訴人を被告として本件と同旨の請求原因による土地明渡訴訟を神戸地方裁判所に提起したが、右訴訟は代理人北村弁護士の事務所移転に伴う手違いにより被控訴人の意に反して休止満了となり、取下とみなされるに至った。しかし、その後も事態は好転しないので被控訴人は昭和三七年三月二三日本件被控訴代理人に委任して再び本訴を提起した。控訴人河合は本訴係属中同年八月一四日ようやく灘簡易裁判所に右紛争の調停申立をしたが、もはや双方の信頼感は地を掃い、結局同三九年二月二八日不調となった(右調停の経過は本件記録により明らかである)。なお、控訴人河合は右調停中にも被控訴人所有の隣地(ロ、ホ、ヘ、ニ、ロを順次直線で結ぶ部分)を無断で自己の選挙運動に使用し、自動車を駐車し、小屋を立てる等の挙に出た。

以上の事実を認めることができ(る)。≪証拠判断省略≫

ところで、控訴人河合は、本件賃料は催告にあるような公定賃料に増額されたこともなく、また「その時々の公定賃料を支払え」というだけでは金額が不明不特定にして過大であるから、いずれにしても被控訴人の催告は本件契約解除の前提として有効な催告とはいえないと主張し、前記認定事実によれば、被控訴人の昭和二二、三年当時の賃料増額交渉は控訴人河合の承諾合意を求める増額申込みであり、必らずしも借地法所定の増額請求権行使の趣旨であったとは解し難く、爾後も双方没交渉であってもとより賃料増額の形跡は認められない。また前記催告内容も具体的な数額を明示せずただ「昭和二二年二月から同三三年一〇月までの公定地代とこれに対する年五分の割合による遅延損害金を支払え」というだけであったことは明らかである(甲第一号証の一)。しかし、一般に金銭債務の催告には当該債務の同一性の認識が可能である限り、必らずしもその金額が明示されている必要はなく、その額が催告内容からみて論理上計数上算出できるものであって、債務者にかかる負担を帰せしめることが諸般の事情からみて無理からぬと思われるような場合、また、右催告額がたとえ過大であっても、前記同様の見地から債務者にとって右催告をみれば少くとも正当債務額の範囲でこれに応じて支払うのが当然であると考えられるような場合には、右催告は解除権行使の前提として有効であると解するのが相当である。本件では前記のとおり被控訴人代理人北村弁護士は「公定地代」の支払いを催告したのであるから、その金額は必らずしも算出不可能とはいえない(前掲控訴人河合の供述によれば、同人は神戸市議会議員の立場にあったのであるから、所轄区役所において本件土地の固定資産額等を調査して公定賃料を算出することはさしたる難事とはいえないことが推認できる。)のみならず、右にいう公定地代はいわゆる経済賃料に比し遙かに低廉に抑えられており、その増額があれば一般世間では特別の事情がない限り増額請求をまつまでもなくその最高額を当然支払うべきものと考えるのが常であって、被控訴人側でもかく考えて従前の申入希望賃料をおさえてこのような催告をしたのであり、控訴人河合もまた公定地代は当然支払うべきものと考えていたのであるから、法律専門家たる弁護士から内容証明郵便を受け、地主側の決意の程も十分察知できた筈の控訴人河合としては、たとえ被催告額の正確な算出が多少繁雑であるとしても少くとも当初の賃料額には応じて然るべき立場にあったと言うべきであり、その他元来控訴人河合は十有余年の長きにわたって百坪に近い他人土地(被控訴人所有地)を使用収益しながら全く賃料を支払っていないものであって、被控訴人側からいえばもはや契約解除のためにかような催告すら必要としない特別の事情にあったと思われる点等を彼此綜合すると、本件では前記の如き程度の内容の催告があれば当初の賃料の範囲において解除権行使の前提として有効であると解すべきである。よって、この点に関する控訴人河合の主張は理由がない。

また、同控訴人は本件賃料不払いは被控訴人の受領遅滞の結果であるというけれども、同控訴人が被控訴人に対し未払賃料につき債務の本旨に従い現実の提供をしたと認めるに足る確証はないから、被控訴人の受領遅滞の有無を考えるまでもなく右主張は失当である。(もっとも、≪証拠省略≫によれば、昭和二二、三年頃一度被控訴人の妻よしと同控訴人が物別れとなったさい、よしは増額申入れのいきさつ上当初賃料額では困るとの態度を示したことが認められるけれども、そのさい同控訴人がやむなく口頭の提供をしたとの確証はなく、かえって同人は右よしに対抗して永年にわたって一切の賃料支払いを拒否してきたこと前説示のとおりであるから、右事実によって本件延滞賃料全額に関する同控訴人の弁済提供の事実、従って被控訴人の受領遅滞の事実を肯認することはできない。)

そうすると、本件賃貸借契約は爾余の判断をまつまでもなく昭和三三年一一月一七日の経過により有効に解除されたというべきである。

三、控訴人河合は被控訴人の右解除権行使は権利濫用であると主張するけれども、本件に顕出された全証拠によっても右主張を肯認するに足る事情は見出せない。かえって、前記認定事実によれば、同控訴人は当初のいきさつは別としても、十数年の長期にわたって賃料支払義務一切の履行を怠ってかえりみず、終始賃貸人の立場を無視してきたため被控訴人の信頼を著しく失い、賃貸借契約の如き継続的契約にあたっては重大な要素であるべき相互の信頼関係を自ら破壊し現在に至ったことが認められる。

四、以上のとおりであるから、控訴人河合は被控訴人に対し原判決末尾(二)記載の建物(A)(B)(C)を収去して同(一)記載の土地九九・五四坪を明渡し、且つ前記契約解除の日の翌日である昭和三三年一一月一八日から右建物収去土地明渡しずみまで一ヵ月一、九九〇円の割合による賃料相当損害金の支払いをなす義務がある。(なお、右損害額についてはその様式体裁により真正に成立したと認める乙第五号証(不動産鑑定士補津田儀雄の鑑定評価書)によって右控訴人の占有土地の賃料額が昭和三三年一一月以降一ヵ月一、九九〇円を下廻らないことが認められ他に反証がないことによりこれを認める。)

第二、控訴人関西土木株式会社、同続木忍に対する請求

控訴人関西土木株式会社が本件建物(A)を使用占有してその敷地部分を占有し、同続木忍が本件建物(C)を使用占有してその敷地部分を占有していること、及び被控訴人が右敷地部分を所有していることは当事者間に争いがなく、右控訴人らは右各敷地の占有権原につき何らの主張立証をしない。

そうすると、爾余の判断をするまでもなく控訴人関西土木株式会社は右建物(A)から退去してその敷地部分の明渡しを、控訴人続木忍は右建物(C)から退去してその敷地部分の明渡しを、それぞれ被控訴人に対しなす義務がある。

第三、結論

よって、被控訴人の本訴請求は全部正当としてこれを認容すべきであるから、本件控訴は失当としてこれを棄却し、附帯控訴は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長判事 石井末一 判事 竹内貞次 畑郁夫)

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